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インテリアデザインを担当した「炉端 酒 勿ノ論」。
既存の炉端焼き店によく見受けられる要素を寄せ集めた店になることは避けたかった。リサーチのために訪れた釧路や札幌の炉端焼きの名店での自分自身の体験を咀嚼し、アップデートしたいと考えた。チープではない気安さや、心が静かに落ち着いていくあの感覚はどこから来るのか。その答えは、「姿勢」と「仄暗さ」にあると思った。
炭焼き台を囲むコの字カウンターとテーブル席のベンチは、座面を低く、奥行きは浅くした。背もたれがないので、座ると自ずと天板に肘をつく姿勢をとることになる。体を少しだけ縮めるこの姿勢は、物理的にも精神的にも人との距離が近づく。(この考えは、2019年に発表したスツール「form」に通じている。)座面はい草ロープを巻いて仕上げた。これは釧路の名店の座面が畳だったことから着想したもので、寸法も参考にしている。
天井の基礎照明を極力減らし、頭上から落ちる光を最小限にした。手吹きガラスの特注スタンドライトによってほんのり照らし出される手元周辺に意識が向かうことで、間仕切りのない親密な空間が生まれた。
カウンターとテーブルの天板は、製材の際に生じるノコ目を残した状態を仕上げとした。仄暗い空間の僅かな光を受けて浮かび上がる表情と、視覚からの情報が制限された中だからこそ感じ取ることができる繊細な手触りを表現した。
カウンターとテーブル、い草のベンチは621によるデザイン・製作。
炉端リサーチのため、真冬の釧路まで同行してくれた。いつもありがたいです。
特注スタンドライトは、今回久しぶりにご一緒することが出来てうれしい、イリスによる制作。
ギリギリまで根気よく細部を詰めてくださいました。
グラフィックデザインはCOMMUNEです。
竣工写真に記録することができなかった、紺屋 纏祝堂による藍染の暖簾や座布団は、改めて撮影したいと思う。
WORKSのページに写真をアップしましたので、ぜひご覧ください。